建物の骨組みを作る鉄骨工事は、ビルや橋、工場などの大型建築に欠かせない工事です。鉄骨を組み上げることで、強度の高い建築物を作ることができ、耐震性や耐久性に優れた構造を実現できます。
一般的に、鉄骨工事は「鉄骨鳶(とび)」と呼ばれる職人が担当し、高所作業や重量物の取り扱いを伴うため、専門的な技術が求められます。 ただし、未経験からでも学べる仕事であり、技術を習得すれば長く続けられる職種でもあります。
本記事では、鉄骨工事の基本的な流れや、実際の作業内容について詳しく解説します。これから鉄骨工事の仕事を目指す方や、興味がある方にとって、具体的なイメージを持てるように紹介していきます。
鉄骨工事の流れを簡単に解説
鉄骨工事は、建物の設計段階から施工完了まで、複数の工程に分かれています。 大きく分けると、「鉄骨の製作」「現場での建方(たてかた)」「本締め・仕上げ」の3つのステップがあります。
1. 鉄骨の製作
鉄骨工事は、まず設計図に基づいて鉄骨を製作するところから始まります。工場で鉄骨が加工され、ボルト穴を開けるなどの準備が整えられます。ここで精密な加工が行われることで、現場での組み立てがスムーズに進むのです。
2. 現場での建方(たてかた)
加工された鉄骨が現場に運ばれ、クレーンを使って高所へ運びながら組み立てていきます。この作業を「建方」と呼び、鉄骨鳶が中心となって進めます。安全を確保しながら、ミリ単位の精度で組み立てていくのが特徴です。
3. 本締め・仕上げ
鉄骨を仮止めした後、ボルトを本締めし、強度を確保します。また、各部の点検や防錆処理を施し、安全に使用できる状態に仕上げていきます。これにより、頑丈で長持ちする鉄骨構造が完成します。
これらの工程が順番に行われることで、鉄骨工事は確実に進められていきます。
鉄骨工事に必要な技術と道具
鉄骨工事には、高所での作業や重量物の取り扱いが伴うため、特別な技術や道具が必要になります。 ここでは、鉄骨工事に欠かせない技術と道具について紹介します。
1. 高所作業の技術
鉄骨鳶は、地上数十メートルの高所で作業することが多いため、足場や鉄骨の上を安全に移動する技術が求められます。 フルハーネス(安全帯)を使いながら、バランスを取りつつ正確に作業を進めるスキルが必要です。
2. ボルト締めの技術
鉄骨はボルトで接合されるため、適切な強さで締める技術が重要です。ボルトを仮止めした後、トルクレンチを使って正確な力で締め付けます。これにより、鉄骨の安定性と耐久性が確保されます。
3. クレーンの合図と連携
鉄骨を吊り上げるクレーン作業では、オペレーターと鳶職人の息の合った連携が欠かせません。ハンドサインや無線を使いながら、安全かつスムーズに鉄骨を移動させる技術が求められます。
4. 使用する道具
鉄骨工事では、スパナやトルクレンチ、インパクトレンチなどの工具を使います。また、安全装備としてフルハーネス、安全靴、手袋なども必須です。これらの道具を適切に使いこなすことで、作業の精度と安全性が向上します。
鉄骨工事の仕事では、こうした技術や道具を駆使しながら、正確で安全な施工を行っていきます。
鉄骨工事が活躍する建築現場とは
鉄骨工事は、さまざまな建築現場で必要とされます。特に大型の建築物や、強度・耐震性が求められる構造物に欠かせない工事です。代表的な現場を見ていきましょう。
1. 高層ビルやオフィスビル
鉄骨は強度が高く、大規模な建物を支えるのに適しています。そのため、高層ビルの骨組みには鉄骨が多く使用されます。建設中のビルを見ると、クレーンで鉄骨を組み立てている光景をよく目にするでしょう。
2. 工場や倉庫
工場や物流倉庫などの広い空間を確保する建物では、鉄骨造が多く採用されています。柱の数を少なくしながら、強度を保つことができるのが鉄骨の大きなメリットです。
3. 橋梁(橋)やインフラ施設
鉄骨工事は、ビルだけでなく、橋や高速道路の高架部分などのインフラ工事でも重要な役割を果たします。特に、長期間の耐久性が求められる橋梁工事では、鉄骨の強度が活かされます。
このように、鉄骨工事は都市の発展やインフラ整備に欠かせない工事であり、幅広い建築物の基盤を支えています。
鉄骨工事のメリットとデメリット
鉄骨工事には、多くのメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットもあります。それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
メリット
✅ 高い強度と耐久性
鉄骨は、木材やコンクリートに比べて強度が高く、大型の建物や高層ビルにも対応可能です。地震や台風にも強い構造を作ることができます。
✅ 工期が短縮できる
鉄骨は、工場であらかじめ加工して現場に運ぶため、組み立てがスムーズで、工期を短縮できるメリットがあります。
✅ 設計の自由度が高い
鉄骨は強度が高いため、柱を減らして広い空間を確保できるのも魅力です。オフィスビルや工場など、大空間が必要な建物に向いています。
デメリット
⚠ サビや腐食のリスク
鉄は湿気や水に弱いため、防錆処理をしっかり行わないとサビてしまう可能性があります。そのため、塗装やメンテナンスが必要になります。
⚠ コストが高くなることがある
木造に比べて鉄骨は材料費が高くなるため、小規模な建物ではコストがかかることがあります。
このように、鉄骨工事には多くの利点がある一方で、適切な管理が必要な側面もあります。
鉄骨工事の将来性と業界の展望
鉄骨工事の業界は、今後も高い需要が見込まれています。都市の発展やインフラ整備が進む中で、鉄骨を使用した建築物の重要性はますます増しています。
1. 都市開発の進展
特に都市部では、高層ビルや大型施設の建設が続いており、鉄骨工事の仕事は今後も安定しているといえます。また、老朽化した建物の建て替え工事でも、鉄骨工事が必要とされるケースが多くあります。
2. 耐震補強の需要増加
日本は地震が多い国のため、耐震補強工事が増加しています。鉄骨を使った補強工事が行われることが多く、建物の安全性を高めるために鉄骨工事の技術が求められています。
3. 技術革新による効率化
鉄骨工事の現場では、新しい技術や機械が導入され、作業の効率化や安全性の向上が進んでいることもポイントです。特に、プレハブ化された鉄骨の導入が進み、現場での作業時間を短縮する動きが広がっています。
このように、鉄骨工事の仕事は今後も需要が高く、技術を身につければ長く安定して働ける業界といえます。
まとめ
鉄骨工事は、建物の骨組みを作る重要な仕事です。強度や耐久性に優れた建築物を支え、都市の発展やインフラ整備にも欠かせない技術として、今後も高い需要が続くと考えられます。
また、鉄骨工事の技術は一度身につければ、一生もののスキルとなり、キャリアアップや独立の道も開かれる職種です。特に、安全管理や精密な作業が求められる分、やりがいも大きい仕事です。
鉄骨工事の魅力を知り、興味を持った方は、ぜひこの仕事に挑戦してみてください。未経験からでも成長できる環境が整っているため、手に職をつけたい人には最適な仕事といえるでしょう。